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IPOへの苦難の道10 ~有償支給の支給品~

経理実務/会計

製造業の企業でよくみられる無償支給、有償支給による製造の会計上の取扱いについて、今回は有償支給について書きたいと思います。

思い返せば会計士なのに会計系のテーマで書くのはこれが初めての気がする 笑
新鮮な気持ちで書き込みたいと思います。

さて、それではまず有償支給とは一体何か?というところですが、ファブレス化を進めているような企業によく見られます。
製造のための材料を仕入れ、その材料を外部の製造業者に支給し、加工してもらった後にまた外部の製造業者から返してもらうという取引です。
この際に外部の製造業者に材料支給を行い、お金を貰うのが有償支給といいます。
ちなみに支給時にお金を貰わないのが無償支給ということですね。

従来の会計処理では有償支給の場合は会社の在庫を減らすという処理をしていた訳ですが、、

どうやら最近話題の収益認識会計基準では、会社の在庫として認識しなければならなくなるようです。

収益認識会計基準では収益の認識は義務の履行という観点が重視されます。
つまり製造業の場合は「製品を取引先に引き渡す」というのが義務の履行になるわけですが、例えば有償支給品を買い戻すことが契約で取り決められている場合は、この「製品を取引先に引き渡す」という義務の履行が済んでいないという判断になるわけですね。
ちなみに買い戻す義務がない場合は、在庫として認識しないでいいようです。

…これは盲点でした。
まさか在庫に関する処理が収益認識会計基準で規定されているとは想像してなかったです。

いやぁ、ちゃんと経営財務読んでてよかった 笑
やっぱり業界の情報誌は大事ですねー。

で、この有償支給の在庫としての認識の必要性の一体何が問題なのかというと、

在庫で認識しなければならなくなった場合、当然有償支給として支給した在庫の把握が必要になるわけです。
そしてここで問題が生じるわけです。

一体どうやって外部の製造業者が管理している有償支給品の在庫数を管理するんだ…?

ということになるわけです。

これはもう外部の製造業者と連携してうまくカウントする仕組みを構築するしかないです。
もう頑張りましょうとしか言えないです。
おそろしい会計基準です。

この部分は監査法人とも協議しながら落とし所を慎重に見極めましょう。

収益認識会計基準の適用まであとわずかですので、皆さんも早めに準備を進めていきましょう!

 

執筆 宇佐見