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IPOへの苦難の道27 ~ストック・オプション発行実務~

全般/IPO

IPO準備会社が必ず発行すると言ってもいいストック・オプション(SO)。新株予約権とも言われるが、今回はその発行の実務と注意点について解説します。

まず「SOとはなんぞや?」ですが、簡単に言うと「自社の株式を割安に買える権利」のことをいいます。
上場する前の株価が低いタイミングでの株価で株式を買うことができる権利が与えられるため、上場した後に権利行使することで、市場よりも低い価額で株式を取得することができます。

SOについては無償での発行と有償での発行の2パターンがありますが、今回は無償SOの発行実務について語ろうと思います。

さてさて、ではまずSOの発行数ですが、大体上場時の発行済株式総数(潜在株含む)の5%〜10%分の株式に相当する割合で発行するのが一般的です。
あとは正直オーナー社長さんのさじ加減次第です。
個人的には会社がお金を出すわけではないので、なるべく多めに発行してあげたほうが従業員も皆ハッピー!と思ってますが、

「自分で借金して、会社作って、命かけてやってきた身としては、高々数年程IPO業務をしてる社員に会社の持分を渡すのは納得いかない部分がある。」

と仰っていたとある社長さんの言葉は心に残るものがありました。

ま、それはさて置き、実際に発行するとなったときの手続きは以下の通りです。

①付与数、対象者、役職案の決定

上場までの資本政策を主幹事証券会社と打ち合わせしながら決めましょう。
SOの付与枠さえ決まればあとは誰にいくら付与するかです。広く従業員の貢献度を評価するため複数回に分けて付与するのが一般的です。
正直ここが1番もめます。公平な付与基準を定め、機械的に対応するのが吉です。

②株価算定
どっかの会計事務所に依頼しましょう。なるべく低く評価してもらう評価方法にしてもらってください。
あ、ちなみに監査法人に聞くとほぼ十中八九「DCF法」でって言ってきます。なのであんまり聞く意味ないです。
そもそも第三者評価額が時価なので、監査法人が評価額に口を出すのがおかしいですし、
「第三者が算定した株価算定書があればいいです。」とぶっちゃけベースで監査法人の担当者に言われたことがあります。

③取締役会の開催(株主総会の招集通知の決議)
株価、誰に付与するかが決まれば取締役会でSOの発行に係る株主総会の招集通知の決議を行います。
このときには付与上限数量、取締役等の役員に対する付与上限数量(役員の報酬に該当するため)、付与対象の属性(取締役、従業員等)を決めることとなります。
ちなみに株主総会ではSOの条件を定め、個別具体的な付与対象者、付与数については取締役会に委任するのが一般的です。
特別な事情がなければ株主総会で定めた付与上限数量の範囲内で1年間は同条件のSOの発行が可能となります。

④株主総会の開催
株主総会でSOの発行決議を行いましょう。

⑤株主総会後の取締役会の開催
株主総会からの委任を受けて取締役会で個々人の付与数を決議しましょう。

⑥変更登記
SOについては登記事項なので、決議後は遅滞なく変更登記の手続きをしましょう。

⑦その他留意事項
SOの発行後は税制適格ストック・オプションに該当する場合は法定調書の提出が、上場の直前事業年度からは付与者と継続保有の確約書の締結が必要となるので、忘れずに対応を。

大体発行までの流れは以上のようになります。
SOの発行は結構私情が交錯することが多いのがこれまで見てきた経験です。なので、”この人は頑張ったから”とか”この人は人柄がいいから”とか明確な基準で示すことが出来ない方法での付与はオススメしません。
付与する方も付与を受ける方もいい気持ちにならないので、勤続年数や役職、仕事の成果をポイント制にする等の基準を設けて付与割当数を決めましょう。

 

執筆 宇佐見